2012年9月28日金曜日

演奏によせてのご挨拶、解説(版画)

今回演奏する『版画』という曲は、

独立した3曲から成り、それぞれ異なった場所(国)を題材にしています。


1曲目は、『塔』。

場所は東洋。パゴダとは、仏教の宝塔を指します。

1899年パリ万博にて、ドビュッシーは東洋(主にインドネシア、ジャワ島など)の

民族音楽である「ガムラン音楽」に出会い、影響を受けてこの「塔」を作曲しました。

まるで、大小さまざまな銅羅やゴング、鍵盤打楽器で奏でられているような、

神秘的で不思議な響きがします。

ドビュッシー自身、東洋を体験したことがなかったにもかかわらず、

東洋の世界がこんなにも身近に感じられるこの曲はまったく驚異的というしかありません。


2曲目は、『グラナダの夕べ』。

場所はスペインのグラナダです。

ここでも、ドビュッシーのスペイン体験と言えば、サンセという街に数時間過ごしただけでした。

スペインの作曲家ファリャは、「1小節たりともスペイン民族音楽を用いていないにかかわらず、

作品全体がほとんどの細部においてスペインを見事に描ききっている。」と感嘆しました。

リズムはハバネラ、ギターのかき鳴らしが所々にあらわれる、スペイン情緒があふれる作品です。


3曲目は、『雨の庭』。

場所はフランスの庭園です。

庭の木立にふりかかる雨の様子が色彩豊かに描かれています。

ポツポツと降る雨、そのうち風を伴ってだんだん勢いづいてくる雨、そして、ひとしきり降った後の

太陽の光を含んだ雨のしずく・・・などを思い起こさせ、小気味よいテンポの中で

情景はどんどん変化していきます。

2つの主題は、「ねんねよ坊や」「もう森へは行かない」というフランスの童謡から引用されています。


ドビュッシーが想像していた遠い東洋、スペイン、そして故郷のフランスに帰ってくる音楽の旅を、

演奏を通じて皆様とともに体感出来たら幸いです。


ヴァラーシュタイン西原典恵

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