2020年2月23日日曜日

ドビュッシー「水の反映」プラータ・クレメンス「露のしずく」(解説 ロベルタ・プラータ・クレメンス)

クラウド・ドビュッシー (1862 - 1918)

「映像」第1集より 「水の反映」

ドビュッシーの「映像」第1集は1905年に完成された。その際、ドビュッシーは、彼自身が言った「全く新しい視点と調和の化学の発見」により、「水の反映」を再び作曲し直した。「映像」第1集は、「水の反映」「ラモーをたたえて」「運動」と題した3曲から成っている。「水の反映」は色彩の豊かさと巧妙さによって、ドビュッシーの最も人気のあるピアノ曲の一つである。この曲には、(きらきらと輝く陽の光を浴びた滴などが描かれる)印象派の絵画とのはっきりとした結びつきが見られる。ドビュッシーは「映像」について、次のように述べている。「私の虚栄心からでなく、この映像がピアノ文献においてシューマン、ショパンに並ぶ地位を得るであろうと思っている。」




ロベルタ プラータ・クレメンス

露のしずく

ごく小さな霧のしずくが朝草の根元にぶら下がり、風とともに滴り落ちる。目の前に海のように広がるしずくはアリにとって、あるいは朝日でしずくが蒸発する前に命が終わってしまうこの宇宙のもっと小さな生き物にとって、全く別世界であろう!


リスト「エステ荘の噴水」ショパン「舟歌 嬰へ短調 作品60」(解説 滝村乃絵子)


フランツ・リスト(1811-1886)

巡礼の年 第3年より 「エステ荘の噴水」

ピアノ独奏曲集「巡礼の年」は、リストが20代から60代までに断続的に作曲した作品を集めたもので、人生の旅路で経験したもの、思ったものを書きとめた形をとっています。

「巡礼の年第3年」は1867年~1877年にかけて書かれた作品7曲をまとめたものです。
4曲にあたる『エステ荘の噴水』は1877年の作曲で、聖職者の資格を得たリストが一切の演奏活動を断ち、ローマ近郊のティボリに建つ16世紀からの城館「エステ荘」に滞在していた際に書かれ、エステ荘の様々な噴水の水の動態を巧みにピアノで表現した作品です。 僧侶となったリストの晩年の作風は、精神性の深い、宗教的色合いの強いものに変化していきます。この曲の楽譜144小節目には『ヨハネによる福音書』からのイエス・キリストの言葉が引用されています。
「私が与える水はその人の内で泉となり、永遠の命にいたる水が湧きあがるであろう」
                                  (『ヨハネ伝』第4章第14節)

順風満帆な音楽人生を歩んできたリストですが、50歳をこえた頃から多くの不幸に見舞われました。 深い悲しみをたたえた曲集の中で、ただひとつだけ、希望の光を感じさせるこの作品を組み込んでいます。噴水を見ている間だけは、世界のつらさから逃れることができる、そんな救いをリストはこの曲に求めたのかもしれません。


フレデリック・ショパン(1810-1849)

舟歌 嬰ヘ短調 作品60

「舟歌」とは主にヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌を指します。寄せては返すの8分の6拍子のリズムの上に、
伸びやかで屈託のない旋律が歌われます。ショパンは1845年から翌年にかけてこの曲を書きました。その時期、愛人ジョルジュ・サンドとの関係、持病の肺結核、すべての中で絶望的な状況の中にありながらも、ショパンはこの世のものとは思えない美しさの極みに到達しました。この雄弁な語り口の裏にある繊細な襞に、失われていくものへの憧れ、寂しさ、悲しみ、孤独が織り込まれています。
ショパン晩年の高貴な精神を宿す傑作であると共に、ピアノ演奏における高度な表現能力を要求される難曲です。

ラヴェル「海原の小舟」 シャリーノ 「アナモルフォジ」 ベリオ「水のピアノ」 西村朗 「ピアノのための《三つの幻影》より『水』」(解説 藤枝有紀子)

ラヴェル: 《鏡》 より 『海原の小舟』
シャリーノ : アナモルフォジ
ベリオ: 水のピアノ
西村朗 :ピアノのための《三つの幻影》より『水』


演奏会のテーマとなった『水』。
辞書での説明・シンボルとしての
意味は概ね次の通りでした。

私には、個々の説明は
理解できても、
なかなか難解で
把握しきれないイメージです。

水素と酸素の化合物。
純粋なものは無色・無味・無臭で、
常温では液体、約100度の沸点で水蒸気に、
氷点下で氷になる。
雨・雪・川・湖沼・地下水・海などとして
自然界にごく普通に存在する無色透明の液体。
動植物体の構成成分としても重要で、
生物の維持に欠かせない。

生命の源にして、死の源。
与えるものであり、破壊するもの。
浄化・癒しの手段にして、
霊のシンボル。
あらゆる潜在的なもの、
あらゆる発展への期待を含むとともに、
あらゆる解消の兆候も含む『無数の可能性』を表すもの。

何はともあれ、
あらゆる生命体が無縁ではいられない
『水』にちなんだピアノ曲。
今回演奏する4曲を一口で解説すると
こんな感じでしょうか?
『波に翻弄されて漂う小舟』
『水にまつわるだまし絵』
『神秘的・儚さ・透明感』
『ヒンズー教の生命原理としての水・ガンジス川』。

様々な水の世界にどっぷり浸かっていただければ、幸いです。


アルベニス「浜辺にて」「港」ドビュッシー「雨の庭」ラヴェル「水の戯れ」(解説 梅谷初)


PIANOSOLIの演奏会では、毎年テーマがあって、
それに沿って、弾く曲を決めるのですが、
(いつも聴きに来て頂いてる方々は、
ご存知だと思いますが。)
今年のテーマは水。
真っ先に弾きたいと思ったのが、
ラヴェル の水の戯れ。
実は、同時にドビュッシーの
水の反映も大好きな曲なので、
弾きたいと思ったものの、
他のメンバーが弾きたいということがあって、
その後は、しばらく何を弾くか
考える必要がありました。^_^;

水については、咄嗟に思いつく限り、
ドビュッシーの映像2から「金色の魚」、
子どもの領分より「雪は踊っている」、
前奏曲1より、「雪の上の足跡」
ラヴェル の「夜のガスパール」から
「オンディーヌ」など、
印象主義の名曲が次々と浮んで来ます。
他にピアノソロ曲ではなくて、
ヴァイオリンの曲ですが、
ブラームスの「雨の歌」や、シューベルトの歌曲、
「水の上で歌う」も良く知られた名曲ですね。

実を言うと、今回取り上げることになった、
アルベニスは、自分にとっては、
全くの初めまして(歌曲、室内楽などを含め)
の作曲家であり、
PIANOSOLI にてお馴染みの、
1つのテーマにより、
曲を選ぶ、という課題でもなければ、
目が向きづらかった作曲家でありました。

今回演奏するアルベニスの2つの曲は
それぞれに、水辺という共通項が
あるものの、作曲された時期は
大きく異なります。
「旅の思い出」Recuerdos de viaje Op.71から
選んだ(実は、この曲集中、他にも水に関連する
曲が何曲かあります!)「浜辺にて」
は、1886年、アルベニス、26才の時、
(すなわち、比較的、初期の作品と言えますね。)
一方「港」は、アルベニスにとって、
ピアノ曲の集大成とも言われる曲集「イベリア」からであり、
アルベニスの晩年、1905(45)から、亡くなる年、
1909年に向けて作曲されています。(アルベニスは、49才と
短命でした。)スペインの作曲家事態、取り上げることが
初めてだったので、特に、「港」に色濃く聴くことのできる、
民族的なリズム、響きがとても新鮮でした。
「浜辺にて」は、美しく少し物哀しい旋律と、
寄せては返す波のような、8分音符の動きが印象的な
小曲ですが、途中、やはり異国情緒を思わせるような、
民族的な旋律を聴くことができます。

ドビュッシーの「版画」Estampesより、
「雨の庭」。この曲集において、
ドビュッシーは、印象主義のピアノ技法を
確立したとされているということです。
55才とやはり、現代の感覚からすると、
短命のドビュッシーですが、
この曲集が作られた年は、1903年。
41才であり、世紀の始まり。
当時においては、新しい時代の幕開けを
思わせるような響きだった事でしょう。
同じクロードの名前を持つ、
モネの絵画のような、情景的な描写が
素晴らしい作品ですね。

ラヴェル の「水の戯れ」。
印象主義といえば、まずはドビュッシーが
が浮かびますし、
ドビュッシーは、ラヴェル より、
10才以上年上で、だいぶ先輩のイメージですが、
意外な事に、「版画」や「映像」以前に
この「水の戯れ」は、作曲されて、発表もされていたんですね。
刻々と表情を変えていく水の描写が見事な、
音による情景描写です。
ちなみに、原題の“Jeu d‘eau“ とは、
むしろ、噴水のことを指すようです。
そう知ると一層、その情景描写が的確に
聴えてくるような気がします。

スペインの巨匠と、フランスの2人の印象主義の巨人。
3人とも、世紀末から、世紀の幕開けを
経験した作曲家たち。
そして、世紀末から、世紀初めに生きる現代の私たち。
古き時代から、新しい時代への移行を
目の当たりにして来たというところで、
何か、共通するエッセンスがあるかもしれません。






























2020年2月12日水曜日

"Wasser" Einladung zum nächsten Konzert 2020, 2020年のコンサ-トのテーマは「水」です!


Liebe PIANOSOLI Freunde,


wir sind noch mitten im Winter – grauer Himmel, kalter Regen, wenig Sonne.
(Obwohl dieses Jahr,vielleicht mehr Sonne scheint als normalerweise?)
Ich hoffe, Sie sind trotzdem alle gesund und munter.

Wir haben auch für dieses Jahr wieder unsere Soli Konzerte geplant.
Dieses Jahr haben wir uns das Thema „Wasser“ ausgesucht.

Wasser.
Für kein Lebewesen auf der Erde ist ein Leben ohne es möglich. Und wir Menschen lieben das Wasser. Wir wollen ihm nah sein und manchmal schätzen wir sogar seine Heilkraft.Wasser kann aber auch unser Feind sein. In Naturkatastrophen wie Hochwasser, Tsunami, Lawinen. Unser ganzes Leben kann dadurch ruiniert werden.

Wasser hat viele Gesichter: als Meer, Fluss, Wolken, Regen, Eis, Nebel, Frost und Schnee.
Ich hoffe, das Sie alle das Thema genauso interessant und aufregend finden wie wir.

Unsere nächsten Konzert wird am Samstag dem 29.2.20 um 18:00 wie gewohnt im stilwerk Saal
bei Bechstein stattfinden. An diesem Abend werden Klavierwerke von Chopin, Liszt, Debussy, Ravel, Berio, Nishimura u.a. gespielt.
Mehr Infos finden Sie unten in diesem Beitrag.
Wir freuen uns sehr, wenn Sie zahlreich mit Ihre Familie und Freunden kommen würden.
Bis dahin wünsche ich Ihnen eine schöne Zeit und alles Gute.

Ihre PIANOSOLI


2月、冬真っ只中であるはずの
デュッセルドルフですが、
ここ数日は、気温が低くても春のような
陽気の日々や、嵐なども起こり、
天気がくるくると忙しく表情を変えていく毎日ですね

今年は、例年に比べ、寒くても太陽が顔を出す日々が
何回もあり、個人的には過ごしやすいように
感じておりますが、
皆様にはいかがお過ごしでしょうか。

初めましての方も、いつもPIANOSOLI
応援して下さっている
皆様方も、当ブログをご覧にお立ち寄り頂き、
誠にありがとうございます。

PIANOSOLIは、一昨年、活動10周年を迎えました、
日本人を中心とした、プロフェッショナルな
ピアニストグループです。
ほぼ全員のメンバーが、日本とドイツで、
音楽大学にて学び、
現在に至るまで、それぞれが、
様々な場所で、ピアニストとして演奏活動を続けております。
PIANOSOLIは、毎回、定期的に1つのテーマを掲げて、
ピアノソロ曲を中心としたプログラムを構成し、
演奏会を催しています。

今年、2020年の演奏会は、いつものように、
stilwerk forumのベヒシュタイン隣のホールにて、
229日、土曜日、18時からの予定でございます。

今年のテーマは、「水」。
この地球上の全ての生きとし生けるものの存在達に、
欠かせない「水」。
水は、私たちの生活に根付いており、
普段、ほとんどその有り難さに気がつかないぐらい
身近な存在ですね。
水は、生きていく為に必要であるというだけでなく、
私たちの心に癒しをもたらす力も秘めています。

人々や、たくさんの動物たちは、
水辺で憩うのが好きですね。
水のざわめきや、海であれば潮の香り、雪景色など、
五感を刺激する力を、水は持っているのです。

水は、私たちにとって、友人であるだけでなく、
時には敵にもなり得ます。
自然の脅威として立ちはだかる水。
それは、洪水であったり、雪崩であったり、津波であったり。

水は、本当に色々な顔を持っています。
蛇口から流れ出る水、泉、温泉、河、海、雪、氷、雹、雨、霧、霜。

今回のPIANOSOLIの演奏会では、そんな水を
テーマにしたピアノソロ曲を中心に、
様々な作曲家の作品を集めました。
ショパン、リスト、アルベニス、ドビュッシー、ラヴェル 、ベリオ、西村郎など
の作品が演奏される予定です。
(詳しくは、後に続くコンサート概要をご覧ください)
入場料は無料ですが、演奏後に心付けをお願いしております。
皆様のご理解、ご協力に感謝致します。
また、この演奏会は、例年に引き続き、
stilwerk、Bechsteinさんの後援、協賛にて実現しております。

このブログでは、コンサート近くなりましたら、
それぞれが演奏する曲目の解説も日本語で
掲載しておりますので、
ご覧頂ければ幸いです。

ご友人、ご家族、知人様など連れ立って、
(もちろん、お一人様も!)
ぜひ当演奏会へ足をお運びくださいませ!!
PIANOSOLI一同、バラエティに富んだ、
ピアノソロ曲の「水の世界」を皆様と楽しむ夕べを、
心待ちにしております。

草々

PIANOSOLI


PIANOSOLI Konzert - Wasser -
PIANOSOLIコンサート、テーマ 「
Samstag, 29. Februar.20, um 18:00 Uhr
2020229日、土曜日、18時開演
Das Programm kann ändern.Wir bitten Sie Um Ihre Verständnis.
*変更の可能性がありますが、ご了承ください。

Programm プログラム


"Reflets dans l’eau“
von Claude Debussy

"Tautropfen"
von Roberta Plata-Clemens

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"Les jeux d'eaux a la Villa d'Este“ (Die Wasserspiele der Villa d'Este)
von Franz Liszt

Barcarolle Fis-Dur, Opus 60
von Frederic Chopin
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"Moldau" (Vierhändig)
von Smetana

------------Pause------------

"Une barque sur l’ocean“ (Eine Barke auf dem Ozean)
von Marice Ravel

"Anamorfosi“
von Sarbatore Sciarrino

6 Encores "Wasserklavier "
von Luciano Berio

"Water“
von Akira Nishimura

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"En la playa“ (Am Strand)
von Isaac Albeniz

"El Puerto“ (Hafen)
von Isaac Albeniz

"Jardins sous la pluie“ (Die Garten im Regen)
von Claude Debussy

"Jeu d‘eau“
von Maurice Ravel

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……Freundlichen Unterstuetzung von C.Bechstein Düsseldorf und stilwerk……

協力、後援:べヒシュタイン・デュッセルドルフ、stilwerk
Am Flügel:PIANOSOLI

Roberta Plata Clemens
Fumie Nishihara
Yukiko Fujieda
Noeko Takimura
Hajime Umetani

演奏、PIANOSOLI (順不同)
ロベルタ・プラータ・クレーメンス
ヴァラーシュタイン西原典恵
藤枝有紀子
滝村乃絵子
梅谷初