2020年2月23日日曜日

アルベニス「浜辺にて」「港」ドビュッシー「雨の庭」ラヴェル「水の戯れ」(解説 梅谷初)


PIANOSOLIの演奏会では、毎年テーマがあって、
それに沿って、弾く曲を決めるのですが、
(いつも聴きに来て頂いてる方々は、
ご存知だと思いますが。)
今年のテーマは水。
真っ先に弾きたいと思ったのが、
ラヴェル の水の戯れ。
実は、同時にドビュッシーの
水の反映も大好きな曲なので、
弾きたいと思ったものの、
他のメンバーが弾きたいということがあって、
その後は、しばらく何を弾くか
考える必要がありました。^_^;

水については、咄嗟に思いつく限り、
ドビュッシーの映像2から「金色の魚」、
子どもの領分より「雪は踊っている」、
前奏曲1より、「雪の上の足跡」
ラヴェル の「夜のガスパール」から
「オンディーヌ」など、
印象主義の名曲が次々と浮んで来ます。
他にピアノソロ曲ではなくて、
ヴァイオリンの曲ですが、
ブラームスの「雨の歌」や、シューベルトの歌曲、
「水の上で歌う」も良く知られた名曲ですね。

実を言うと、今回取り上げることになった、
アルベニスは、自分にとっては、
全くの初めまして(歌曲、室内楽などを含め)
の作曲家であり、
PIANOSOLI にてお馴染みの、
1つのテーマにより、
曲を選ぶ、という課題でもなければ、
目が向きづらかった作曲家でありました。

今回演奏するアルベニスの2つの曲は
それぞれに、水辺という共通項が
あるものの、作曲された時期は
大きく異なります。
「旅の思い出」Recuerdos de viaje Op.71から
選んだ(実は、この曲集中、他にも水に関連する
曲が何曲かあります!)「浜辺にて」
は、1886年、アルベニス、26才の時、
(すなわち、比較的、初期の作品と言えますね。)
一方「港」は、アルベニスにとって、
ピアノ曲の集大成とも言われる曲集「イベリア」からであり、
アルベニスの晩年、1905(45)から、亡くなる年、
1909年に向けて作曲されています。(アルベニスは、49才と
短命でした。)スペインの作曲家事態、取り上げることが
初めてだったので、特に、「港」に色濃く聴くことのできる、
民族的なリズム、響きがとても新鮮でした。
「浜辺にて」は、美しく少し物哀しい旋律と、
寄せては返す波のような、8分音符の動きが印象的な
小曲ですが、途中、やはり異国情緒を思わせるような、
民族的な旋律を聴くことができます。

ドビュッシーの「版画」Estampesより、
「雨の庭」。この曲集において、
ドビュッシーは、印象主義のピアノ技法を
確立したとされているということです。
55才とやはり、現代の感覚からすると、
短命のドビュッシーですが、
この曲集が作られた年は、1903年。
41才であり、世紀の始まり。
当時においては、新しい時代の幕開けを
思わせるような響きだった事でしょう。
同じクロードの名前を持つ、
モネの絵画のような、情景的な描写が
素晴らしい作品ですね。

ラヴェル の「水の戯れ」。
印象主義といえば、まずはドビュッシーが
が浮かびますし、
ドビュッシーは、ラヴェル より、
10才以上年上で、だいぶ先輩のイメージですが、
意外な事に、「版画」や「映像」以前に
この「水の戯れ」は、作曲されて、発表もされていたんですね。
刻々と表情を変えていく水の描写が見事な、
音による情景描写です。
ちなみに、原題の“Jeu d‘eau“ とは、
むしろ、噴水のことを指すようです。
そう知ると一層、その情景描写が的確に
聴えてくるような気がします。

スペインの巨匠と、フランスの2人の印象主義の巨人。
3人とも、世紀末から、世紀の幕開けを
経験した作曲家たち。
そして、世紀末から、世紀初めに生きる現代の私たち。
古き時代から、新しい時代への移行を
目の当たりにして来たというところで、
何か、共通するエッセンスがあるかもしれません。






























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