2014年2月14日金曜日

ベリオ「芽」「葉」、武満徹「雨の樹素描」「雨の樹素描Ⅱ」、シベリウス「5つの小品」op.75,op.85

今回の演奏会のテーマ『花と自然』。
この機会に前々から弾いてみたかった曲を、並べてみました。

『芽』『葉』は、1990年に書かれた作品。
前者は、どこまでも密やかに。
後者は、動きはあれども一つにつながった響き。
どことなく、生物の授業を連想させられるのは、私だけでしょうか?

シベリウスの『5つの小品』は、それぞれ『花・樹木』をテーマにしています。
両作品とも、第一次世界大戦の間、外国での演奏旅行を諦めざるを得ず、
ドイツの出版社からの印税も途絶えて、経済的に困窮していた
シベリウスが、生活のために量産したピアノ作品群に属します。
(その間、、交響曲第5番の作曲と改訂も粘り強く継続。)

op.75 『ひな菊・カーネーション・あやめ・金魚草・つりがね草』
op.85『ピヒラヤの花咲く時・孤独な松の木・ハコヤナギ・白樺・樅の木』
まるで、美しい絵葉書セットを思い起こさせる、魅力的な小曲ばかりです。

武満徹の『雨の樹 素描』は、ノーベル賞作家の大江健三郎氏が1980年に
発表した『頭のいい雨の木』という短編小説に触発されて書かれた作品。
前日の雨を、葉に蓄えて乾燥することのない頭のいい雨の木。
空から降ってくる雨、水分を蓄えて重たげな雨の木の葉、そこから滴る水。
湿り気の感じられる、不思議なサウンドです。
この作品の初演を受けて、大江氏は『「雨の木」を聴く女たち』を執筆。
その後、作品は同名の連作長編小説となって発表されました。

『雨の樹 素描 ll 〜オリヴィエ・メシアンの追憶に〜』は、
20世紀の欧州現代音楽会を牽引した作曲家で、1992年に亡くなった
オリヴィエ・メシアンの追悼演奏会のために書かれた作品。
中間部の『joyful』では、敬虔なカトリック信者でもあった
メシアンが迎えた『永遠に失うことのない真の幸福への門出』が
描かれているように感じられます。

自然の一端を担う『植物』にまつわる作品の数々。
お楽しみいただければ、幸いです。

藤枝有紀子 

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