2019年1月27日日曜日

セザール・フランク 前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 (解説 滝村乃絵子)

セザール・フランク(1822-1890): 前奏曲、コラールとフーガロ短調

前奏曲、コラールとフーガロ短調はセザール・フランクが1884年に作曲したピアノ独奏曲である。1845年以降、ほとんどピアノ曲を作曲していなかったフランクの約40年ぶりの本格的なピアノ曲で、後の「前奏曲、アリアと終曲」(1886)と並んで彼の傑作である。この2曲は全くピアノ的とはいえないにしろ、独自の構成と高い音楽性をもっており、ピアニストに大切なレパートリーとなっている。各曲とも、バッハ(オルガン曲)、ベートーヴェン(後期の四重奏曲)、リスト、ワーグナーらの影響が、技法的にも精神的にも強いが、循環形式による構成法はフランク独自のものであり、また独特の和声法から生まれる色調は魅力的で、フランドルの宗教画に見られる穏やかだが熱っぽい光を連想させる。作曲当時、作者は既に60歳を超えていた。しかしこれらの作品は、晩成の彼にとっては、以後「ヴァイオリン・ソナタ」(1886)「交響曲」(1888)「弦楽四重奏曲」(1889)「3つのオルガン用コラール」(1890)と続く晩年の器楽の傑作群の入り口に位置している。

フランクはベルギー人である。音楽史をバッハ以後しか考えない人には信じ難いだろうが、500年さかのぼると、12世紀のノートルダム学派以来、マショー、デュファイ、ジョスカンらの天才を生み、永く西洋音楽の中心であったのはフランスであり、しばしばその栄光を支えたのは多くのフランドル系の作曲家達であった。そして19世紀、オペレッタが流行し、芸術音楽が停滞期にあったフランスで、ようやく芸術音楽復興の気運が高まり、優れた器楽曲が書かれ始めた時、リエージュ生まれのフランクが再びフランス音楽に大きな寄与をすることになるのだった。

この曲を演奏するにあたって意識したことは、構成と音色。小さな基本動機が見事に発展し、全体が構築されている。フランク独自の和声法転調のもたらす色の変化。フランドルの光のような色感をイメージし、オルガンの響きをピアノの中に感じること。長年、パリの教会でオルガン奏者を勤めたフランクの神への信仰、宗教的感情の深さはどんなであっただろうか?今回は自分にとって初演であるが、さらに今後も考察していきたい。



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