2011年10月2日日曜日

トリスタンとイゾルデより「愛の死」、リゴレット・パラフレーズ

今回選んだ、2曲の演奏会用パラフレーズはどちらも、
大変有名なオペラ作品を
下敷きにして作られた作品です。
今日このブログでは、リスト本人のことは少し横において、
これらの元になった作品、作曲家
について何か書いてみたいと思います。


ジュゼッペ・ヴェルディ、リヒャルト・ワーグナー。
オペラ史において巨人のような存在、今もオペラ座で演奏され続ける
主要なレパートリーになる偉大な作品群を遺した二人の作曲家。
しかし、あまりにもイメージが違いすぎてこの二人が
まったく同じ誕生年に生まれているとは、ちょっと想像がつきません。
(1813年生まれ。リストのふたつ年下ですね。)

二人が、同席することは一生のうちで一度もなかったらしいのですが、
ヴェルディは、晩年ワーグナーを意識し、
オーケストレーションなどをあえて勉強もし、
自分の作品に反映したとされています。

ワーグナーとリストは、いうまでもなく、
リストの娘コジマが後年奥さんになるぐらいの(?)濃ゆ~い交友関係がありました。
ちなみに、リストが心筋梗塞で亡くなる直前にバイロイト音楽祭で観ていたのが
(当時からあったんですね。。)ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」だったそうです。
でも、オペラを観た直後に亡くなるとは、大作曲家らしい死に方だなあ、と思ってしまいます。

この「トリスタンとイゾルデ」の中から、第3幕3場のイゾルデのアリア
愛の死」をテーマに作られたのが、今回演奏するリストの編曲篇です。
「トリスタンとイゾルデ」についてワーグナーは
「あらゆる夢の中で最も麗しい夢への記念碑」と語っています。
フリードリヒ・ニーチェ曰く、
「私は今日でも尚『トリスタン』と同じくらい危険な魅力を持ち、
同じくらい戦慄的で甘美な無限性を具えた作品を探しているのだが、依然として見つからない。
――芸術の全領域を探しても見つからないと思っている。
レオナルド・ダ・ヴィンチの示すあらゆる異様な魅力も、
『トリスタン』の最初の一音で魔力を失ってしまうであろう。
この作品こそ、断じてヴァーグナーの最高の絶品である。」
危険で、戦慄的で、しかも甘美、、、。
なんだかぞくぞくっとして来て、観てみたい気がしてきませんか。

リゴレットは、ヴェルディのオペラでは醍醐味のひとつとなる、
登場人物の心理描写がとても面白いオペラです。
元々ヴェルディが「呪い」というオペラの名前を考えていて、
台本作家のピアーヴェに反対して止められ、
道化役者の主人公「リゴレット」の名になったらしいのですが、
正に「呪い」としか言いようのない、これでもかというような、
神も仏もない、だからこそのザ・オペラなミゼラーブルなお話です。
劇中のアリアとしては、ピザのCMにまでも(!)出てきて、
もはや、歌謡曲のようにポピュラーな「女心の歌」が最も有名で、
踏んだりけったりの運命、世にも気の毒な女性、
ジルダの「慕わしき人の名は」もコロのアリアとして、耳に馴染みのある曲です。
リストが編曲したパラフレーズでは「美しい恋の乙女よ」                      

第三幕の四重唱のテーマを主題に作られています。
みなさんのオペラ体験のきっかけになるような、
どきどきわくわくのオペラの世界のエキスが、
少しでも表現できますように
楽しくスリリングに演奏できたらと思います。

注:赤いリンクの文字をクリックすると、
元のオペラのテーマの映像を観る事ができます。

梅谷初

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