2011年10月2日日曜日

ピアノソナタ ロ短調

リストは、多数のピアノ曲を残しましたが、
「ソナタ」と名がつくものは、唯一このロ短調ソナタです。
リストの最も実り多い時期に作曲され、彼の最高傑作であると同時に、
現在ではロマン派を代表する重要なピアノ曲のひとつとなっています。

しかし、この曲が初演された当時は、「賛成」「反対」の意見が真っ二つに
分かれ、歴史上もっとも大きな論争になり、それは長い間続いたといわれます。
ソナタといえど、その形式よりはずっと自由で、革新的な曲だったからです。
ワーグナーは賛成派 、そしてこの曲が贈られたR.シューマンの妻
クララ・シューマンやブラームス、は皮肉にも反対派でした。
献呈されたロベルト・シューマンは、その時すでに、病んでいたということです。

もし・・・私がその当時生きていて、まだ近・現代音楽や他のジャンルの音楽を知らない私が
はじめてこの曲を聴いたなら・・・どう感じただろうか。賛・否のどちらに属するのだろうか?
・・・と、つい、そんなことを想像してしまいます。
どちらにしても、この曲の威厳にあふれる力強さに圧倒され、美しい世界に引き込まれてしまう
ことは間違いないでしょう。

数少ないモチーフが、約30分連続して演奏されるこの曲の至る所に、
天使のように、そして、時折悪魔のように姿を変えながら現れ、
統一感をなしているのが特徴です。
まるで、一人の人間にも美と悪が共存しているんだ、と言っているかのように・・・。

暗い影、祈るような一筋の光、また内面から情熱が迸り、燃え尽きるドラマチックな曲であり、
私たちを別世界へ引き込んで行ってくれます。
大作であると同時に、技巧的にも大変難しい曲。
自分なりにリストをどこまで追求できるかが課題です。

是非、みなさんも一緒にリストの世界を体験してみてください。

ヴァラーシュタイン西原典恵

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