ラフマニノフといえば、たぶん、どんな人もすぐ頭に浮かべるのが、2番のコンチェルト、
そして、少しピアノ音楽を学んで興味がある人なら、きっと、3番のコンチェルトの事や、
パガニーニの主題による狂詩曲も続けて思い浮かんでくるに違いありません。
その華麗な魅力。私にとっても、多くの音楽ファンの例に漏れず、
ラフマニノフへのとっかかり、憧れの始まりは協奏曲でした。
まだ、さらったことはないのですが、
いつか必ずさらいたい夢の曲の一つであることに、間違いありません。
私にとって、2番の協奏曲で大好きだったのは、リヒテルの録音。
第一音が鳴り響いたそばから、ごうううっと、まるで雪嵐の予兆のような深く、
凍てついた和音が鳴り響き、モスクワフィルがその後ろに、ごうごうと鳴り響きます。
目をつぶると雪の結晶が、そこら中を埋め尽くして行く様が見えてくるかのようでした。
亡命していたラフマニノフが故郷を離れて以来、長らく曲を作っていなかった理由について尋ねられると、
「もう何年もライ麦のささやきも白樺のざわめきも聞いてない」と答えたと言います。
このことからも、このロシア生まれの作曲家にとって、いかに多く、故郷の景色や、
自然からインスピレーションを得ていたかが、想像できます。
さて、話の矛先を今回演奏することになっている、ピアノソナタ第二番へ戻したいと思います。
この作品は、ややこしい作曲のバックグラウンドがあって、何種類かのバージョンで演奏されていて、
演奏者はまず、どのバージョンで演奏するのかを、最初に検討するところから入ることになります。
というのも、まずは1913に第一版が発表されているのですが、これが不評で、
作曲家自身によりもう一度検討されて、後に1931年に改討版が出版されます。
いま、この二つを聴き比べてみると、どちらの版にもそれなりの良さ、
面白さがあると思えますが、第一版は言うなれば、
口悪く言ってしまうと、だらだらとした印象があり、
より難解で、気難しい雰囲気があるように感じます。
ラフマニノフと親しい交流があったホロヴィッツは最終版にも
不満があり書き換えるようにリクエストしていたらしいのですが、
作曲家が亡くなってしまったために、ホロヴィッツは自分自身で二つの版を融合させた
ホロヴィッツ版を作成してしまい、これを演奏していました。
このホロヴィッツ版が気に入って取り上げる演奏者もいるので、
結果3つのバージョンの演奏があちこちに出回っている状況になっているのです。
曲について、少し話すと、第一楽章は雪崩のような音型からスタートして、
何かに向かって疾走するように、激しく華麗に展開して行きます。調性は変ロ短調、アレグロ・アジタート。
しばらくすると平行調の第二主題が出てきますが、この主題は2楽章の締めにもちょいと顔を出します。
2楽章はロマンティックな回想のようです。激しい恋の記憶、遠い過去の甘く切ない響き。。。
ホ短調で、レント、ワルツのような主題は8分の12拍子です。
循環主題が幻想的に展開して行きます。
第三楽章は、変ロ長調のソナタ形式。一楽章の始まりの変形のような、更なる雪崩音型から(勝手に命名、、)^^;からスタート。
この突撃ぶりは凄まじいです。。。速さがハンパない。
しかも、つんのめってしまわぬよう、それなりに手綱で引っ張りながら先へ進むので、
かなりのテクニックを要します。練習した後、たまに手が痛くなります。(涙 )
巨大な手の持ち主だったラフマニノフには、不都合なかったんでしょうね。
第二主題は、ポコ・メノモッソで優雅に展開されたあとに、循環主題が再現され、
カデンツはこの循環主題がこれでもかと、派手にきらびやかに展開して大団円を迎えます。
派手さ、インパクトで言えば、協奏曲に引けを取らないと思えるような大作です。
今回は、さらい始めて、ほぼ4ヶ月、初めて人前に晒すので弾き通せるかどうか、
不安もありますが、一生のレパートリーにしていきたいと思うぐらい、
楽しんでさらってきたので、長い年月をかけてじっくり、
自分の持ち曲にしていけるようになるのが目標です。
今回は未熟な出来栄えながらも、精一杯、この大作の醍醐味、
魅力に寄り添って表現したいと思っています。
皆様と共に楽しむことが出来ましたら幸いです。
梅谷初(うめたにはじめ)
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