2016年2月10日水曜日

Maurice Ravel : La Valse, Poème chorégraphique pour orchestre  藤枝有紀子

モーリス・ラヴェル 管弦楽のための舞踏詩『ラ・ヴァルス』
Maurice Ravel :  La Valse,  Poème chorégraphique pour orchestre 

 ラヴェルの晩年の弟子、ローゼンタールによれば
『ラ・ヴァルス』はラヴェルのお気に入りの作品でした。
もともとは、1906 年頃『ヨハン・シュトラウスン2世への
オマージュとしての交響詩風ウィンナーワルツ』として構想。

その後、1914年ごろには、交響詩『ウィーン』という 題名も浮上したものの、
完成には至らず。最終的には、第一次世界大戦への従軍後、
ロシア・バレエ団のプロデューサー、ディアギレフに新曲を依頼された際に 
『ラ・ヴァルス』として作曲されました。

構想から完成までの経緯からしても、
ラヴェルのこの作品への思い入れの強さが伺えます。
完成後、2台ピアノ版を披露したものの、ディアギレフには採用してもらえず、
完全な絶交状態になってしまったようです)

  『ラ・ヴァルス』の管弦楽スコアの冒頭に書かれた短いシナリオ。
そこには『1855年頃の宮廷』とあります。
その頃のウィーンといえば… 1854年に オーストリア帝国の実質的な『最後の皇帝』
フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベートが結婚。
シェーンブルン宮殿の『鏡の間』では、
招待客3000人にも及ぶ 祝賀舞踏会が行われたとか。
(ヨハン・シュトラウス2世が 指揮を担当)
そ の後、ウィ—ンの街は大規模な都市改造が施され
『世紀末ウィーン』の時代を迎えますが、
その一方で、オーストリア=ハンガリー二重帝国の混乱や凋落は進 み、
第一次世界大戦の終結した1918年には皇帝が退位。
650年間の長きに渡って、中欧に君臨したハプスブルク家の帝国は崩壊に至りました。

 その少しあと、1919年から1920年にかけて作曲された『ラ・ヴァルス』は、
豪 華絢爛な雰囲気の中にも、倒錯・狂気・不安の存在が見え隠れする幻想的な音楽。
渦巻く雲の中からだんだん浮かび上がってくる、華やかな宮廷舞踏会の世界。
 次々と流れるワルツに心地よく身を委ねていると、
やがて各ワルツが溶解して混ざり合い変容を遂げ、
ぐるぐると旋回して、唐突に終了!
『管弦楽の魔術師』と も呼ばれるラヴェル。
彼の作り出す色彩感をどこまで表現できるか、
今回は 作曲者自身によるピアノ独奏版でお楽しみください。


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