2016年2月10日水曜日

Sergej Prokofjev: "Romeo und Julia" 10 Stücke für Klavier 梅谷初

バレエ「ロメオとジュリエット」からの10の小品 op.75
セルゲイ・プロコフィエフ作曲。

  1. フォーク・ダンス
  2. 情景
  3. メヌエット
  4. 少女ジュリエット
  5. 仮面
  6. モンターギュー家とキャピュレット家
  7. 僧ローレンス
  8. マーキュシオ
  9. 百合の花を手にした娘たちの踊り
  10. ロメオとジュリエットの別れ

シェイクスピアの戯曲、「ロミオとジュリエット」に、ロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフがバレエ付随音楽として、オーケストラの為に作曲した作品です。

1917年、第一次大戦の真っ只中で
ロシアに革命の嵐が吹き荒れる折、
真剣に亡命を考え、翌年、アメリカへ渡ったプロコフィエフ。
意図していたほどに、作曲家として厚遇を受けることができなかったためか、
1933年には、再び祖国へ舞い戻って来ることになったのです。
この翌々年,1935年、祖国へ戻ってから、初めての大規模な作品が、
バレエ音楽、「ロミオとジュリエット」でした。
当時、スターリンの恐怖政治下にあったソビエトでは
芸術家の監視、作品への言及、
影響を及ぼすことはごく当たり前に行われていたようです。
このためもあってか、プロコフィエフの原案では
なんとジュリエットが最後幕で息を吹き返す、ハッピーエンドだったそう。
振り付けが関係していたというプロコフィエフの自伝で語られていますが
悲劇的な結末を良しとしない、社会主義的な風潮に気を使った、
もしくは口を出されたから、という見方もあります。
最終的には、原作通りのラストシーンで落ち着きました。
1937年にピアノ作品用の組曲として、10曲が抜粋され、
(元のバレエ曲は、4幕、52曲。)同年に作曲者自身がモスクワで初演しました。

今回のピアノソリのコンサートでは、
1,フォークダンス、4,少女ジュリエット、
6,モンタギュー家とキャピュレット家の三曲を演奏する予定です。

「フォークダンス」たくさんの民衆があちこちに散らばり
手に手を取って、陽気に飛び回り踊り跳ねているような
様子が目に浮かんでくるようです。
三音の下降形がくるくると回る様子を思い浮かばせ、
オクターブの跳躍がジャンプに聴こえてきます。
第二幕三場の一曲目で、有名なバルコニーの場面はもう終わっていますから、
話が佳境に入って来て仕切り直した感じの場面かな。

その次に演奏する「少女ジュリエット」
元気発剌で、ぴちぴちの14歳のジュリエット。
若さが弾ける跳ねっ返りぶりで、舞台に登場してくるシーン、
第二幕二場の10曲目。
中間部のモチーフで切なく、しっとりとしたメロディーが
恋への憧れと不安を思わせる美しさで奏でられます。
この時、まだジュリエットはロメオに出会っていないのだけど、
すでに、ときめきと悲劇の予兆があったことを想像させます。

そして、ドラマやCMなどで耳にしたことがある人も多い、
恐らく、この組曲の中で最も有名な、「モンタギュー家とキャピュレット家」
ホ短調の主和音が、単純に重ねられているだけのテーマですが、
とても重厚な響きで展開していきます。
原曲では、弦楽器で奏でられる騎士たちの踊りのテーマに続いて、
ホルンが主旋律になって、決闘のテーマが流れ、
両家の小競り合いが、決闘も交えた乱闘になりかかった様子が描かれます。
続いて、中間部に憂鬱で、か細いフルートの旋律が奏でられますが、
これはジュリエットが、望まぬ婚約者であるパリスと不幸な様子で
踊っている姿が描写されているのです。。。

表情豊かに、生き生きと原作の世界観を
思わせるように、描かれたこれらのヴィルトゥオーゾな
作品。
この世で最もロマンチックかつ、悲劇的なこの名作を
まぶたの裏に独自の演出を思い浮かべて聴いて楽しんで
頂けたらな、と思います。











0 件のコメント:

コメントを投稿