2016年2月10日水曜日

Schumann-Liszt "Widumung" Schubert-Liszt "Ave Maria" Schubert-Godowsky "Die Forelle" 滝村乃絵子

シューマン/リスト: 献呈
この曲はシューマンの歌曲集『ミルテの花』の中の第1曲《献呈》~君に捧ぐ~をリストがピアノ独奏曲として編曲したものです。シューマンは全26曲から成るこの歌曲集を、結婚式の前夜にミルテの花を添えてクララに贈っています。クララの父、ヴィークの執拗な反対で裁判沙汰にまで発展した結婚でした。その第1曲を飾る《献呈》は、「あなたは私の心、私の命、私の魂、私の全て」というクララへの溢れる愛に彩られた歌詞がつけられ、情熱的に、高らかに歌い上げられます。
リストの編曲ではピアニスティックな煌めきと華やかさが加えられ、原曲とはまた違ったロマンティックで美しい作品に仕上がっています。
ミルテの花は白くて長い雄しべを持つ香りのよいお花です。花嫁の装飾に使われる花で、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、ウェディング・カードなどのモチーフになっているものもあります。

歌詞 
Du meine Seele, du mein Herz,          きみこそはわが魂よ、わが心よ
Du meine Wonn', o du mein Schmerz,
      きみこそはわが楽しみ、わが苦しみよ、
Du meine Welt, in der ich lebe,
          きみこそはわが生を営む世界よ、       
Mein Himmel du, darein ich schwebe,
      きみこそはわが天翔ける天空よ、   
O du mein Grab, in das hinab
           きみこそはわが心の悶えを
Ich ewig meinen Kummer Gab!
          とこしえに葬ったわが墓穴よ。
Du bist die Ruh, du bist der Frieden,
      きみこそはわが安らぎよ、和みよ、
Du bist vom Himmel mir beschieden.
      きみこそは天から授かったものよ、
Dass du mich liebst, macht mich mir wert,
   きみの愛こそわが価値を悟らせ、
Dein Blick hat mich vor mir verklart,
       きみの眼差しこそわが心をきよめ、
Du hebst mich liebend über mich,
         きみの愛こそわれを高めるものよ、
Mein guter Geist, mein bress'res Ich!
       わが善い霊よ、よりよいわが身よ。 

シューベルト/ リスト: アヴェ・マリア
アヴェ・マリアとして知られる歌曲は19世紀初頭を代表するスコットランドの詩人、ウォルター・スコットの詩物語「湖上の美人」によってシューベルトが書いた7曲の歌曲の一つです。1825年に作曲され、この歌曲を一括した「op.52」の第6曲目として1826年に出版されました。正式の題名は「エレンの歌 第3番」で「湖上の美人」の3日目、「一族の招集」でエレンが父の無事を願いマリアに祈る歌です。アヴェとはラテン語でおめでとう、栄えあれ、といった意味です。湖上の美人<Lady of the lake>はスコットランドの高地(ハイランド)を舞台とした長編物語です。アーサー王伝説の「湖上の貴婦人」になぞらえた美しい娘エレンを中心とした6日間の出来事を描いています。さざなみの伴奏形で飾られた一種天国的な清らかさと美しさを持つメロディーは数ある聖母賛歌の中でも、グノーの作品とともに広く人々に愛されています。華麗なる超絶技巧と派手な演奏スタイルで有名であったフランツ・リストは、当時まだあまりしられていなかった作曲家の作品を編曲し、そうすることで名前が売れた作曲家もいました。その一人がシューベルトです。リストは1835年から1847年の間に50曲以上ものシューベルトの歌曲を編曲しています。       

歌詞
Ave Maria! Jungfrau mild,           アヴェマリア 慈悲深き乙女よ
Erhöre einer Jungfrau Flehen,
         おお 聞き給え 乙女の祈り
Aus diesem Felsen starr und wild
       荒んだ者にも汝は耳を傾け  
Soll mein Gebet zu dir hinwehen.
       絶望の底からも救い給う
Wir schlafen sicher bis zum Morgen,      汝の慈悲の下で安らかに眠らん  
Ob Menschen noch so grausam sind.      世間から見捨てられ罵られようとも
O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,     おお 聞き給え 乙女の祈り
O Mutter, hör ein bittend Kind!Ave Maria!    おお 母よ聞き給え 懇願する子らを


シューベルト/ ゴドフスキー: 鱒
原曲は1817年20歳になるシューベルトが、ドイツの詩人、クリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルトの詩 「ます」に基いて書き上げた作品。第1節では小川に遊ぶマスの姿が描かれ、第2節では釣り人が現れ、このマスを狙います。そして第3節ではついにマスは釣り上げられるのです。どんなにすばしこく泳ぎ回っても釣り人の手を逃れられない哀れなマスの運命が歌われています。詩に描かれたマスと人間の駆け引きに心惹かれたシューベルトが、その光景をドラマチックに表現した作品だったのです。レオポルド・ゴドフスキーはポーランド出身の偉大なピアニスト、作曲家、編曲家。彼は19世紀終わりから20世紀の初頭にかけて最高のピアニストとして同世代のブゾーニに匹敵する存在でした。ヴィルトゥオーゾタイプというよりはデリケートな演奏をするタイプだったと言われています。ピアニストとしてのゴドフスキーは特に重要な師がいるわけではなく、ほとんど独学だったと言われています。ゴドフスキーは12のシューベルトの歌曲を編曲しています。原曲の旋律を保ちつつ、ハーモニーや伴奏形に所々、変化を加えています。

歌詞
In einem Bächlein helle,         澄んだ小川で泳ぎゆぐ鱒(ます)   
Da schoß in froher Eil
          力強く矢のように過ぎていく
Die launische Forelle
Vorüber wie ein Pfeil.

Ich stand an dem Gestade       私は岸辺でくつろぎながら
Und sah in süßer Ruh
          元気な魚を眺めてた       
Des muntern Fischleins Bade
Im klaren Bächlein zu.
Ein Fischer mit der Rute         釣竿かついだ漁師が一人
Wohl an dem Ufer stand,
         魚の動きをじっくり見てる
Und sah's mit kaltem Blute,
Wie sich das Fischlein wand.

So lang dem Wasser Helle,        こんなに澄んでる川の中では
So dacht ich, nicht gebricht,
       針に魚はかかるまい
So fängt er die Forelle
Mit seiner Angel nicht.
Doch endlich ward dem Diebe      しびれを切らした釣り人は
Die Zeit zu lang. Er macht
         小川を掻き混ぜ にごらせた
Das Bächlein tückisch trübe,
Und eh ich es gedacht,

So zuckte seine Rute,            すると釣竿ぴくりと動き
Das Fischlein zappelt dran,
         罠にかかった哀れな鱒は
Und ich mit regem Blute
           釣られて陸で跳ね回る
Sah die Betrogene an.


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